福岡県の介護タクシー事情
福岡県は九州地方最大の人口を誇り、2025年現在の高齢化率は約28.3%(全国平均水準)です。しかし絶対数では高齢者人口が約146万人と九州最多であり、介護タクシーの需要は非常に高い水準にあります。福岡市・北九州市という政令市2都市を中心に事業者数は九州随一で、利用者の選択肢が豊富です。
福岡県のタクシー運賃は、福岡A地区(福岡市・春日市・糸島市・糟屋郡など)、北九州地区(北九州市・中間市・遠賀郡)、福岡B地区(久留米市・宗像市・飯塚市・行橋市など上記以外の39市町村)の3つに区分されており、各地区で異なる料金体系が設定されています。介護タクシーを利用する際は、どの地区に属するかを事前に確認することが重要です。
また、福岡市では障害者・高齢者向けの福祉タクシー利用券制度が充実しており、複数の券種から選択できる仕組みになっています。ただし、制度ごとの重複利用ができないルールがあるため、どの制度を選ぶかは慎重に検討する必要があります。
介護タクシーの料金は、通常タクシーと同じメーター運賃(距離・時間制)に、介助料・機材使用料・迎車料などが上乗せされる仕組みです。「介護タクシー専用の料金表」があるわけではなく、タクシーメーター運賃は各地区の認可運賃が適用されます。このページで掲載する「料金」は、このメーター運賃のことを指します。
福岡県のタクシーメーター運賃(3地区別・最新情報)
福岡県のタクシー運賃は3地区に分かれています。それぞれ改定時期や料金水準が異なりますので、ご利用の地域をご確認ください。
A地区福岡A地区(福岡市・春日市・糸島市・糟屋郡など)
福岡市を中心とする交通圏です。2023年8月1日に運賃改定が実施されました。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 初乗り運賃 | 1.6kmまで 830円 | 2023年8月改定(旧:670円) |
| 加算運賃 | 268mごとに 80円 | 時速10km以下は時間距離併用 |
| 時間距離併用 | 1分20秒ごとに 60円 | 渋滞・信号待ち時に適用 |
| 深夜早朝割増 | 22時〜翌5時 2割増 | メーター運賃に一律加算 |
| 障害者割引 | 手帳提示で1割引 | 9,000円超の部分が1割引(普通車) |
北九州地区北九州地区(北九州市・中間市・遠賀郡)
北九州市を中心とする交通圏です。2022年9月26日に運賃改定が実施されました。近距離利用者向けに「初乗距離短縮運賃制度」が導入されており、ほとんどの事業者が採用しています。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 初乗り運賃(短縮制) | 1.04kmまで 610円 | ほとんどの事業者が採用 |
| 初乗り運賃(認可上限) | 1.6kmまで 770円 | 事業者により異なる場合あり |
| 加算運賃 | 280mごとに 80円 | 2022年9月改定 |
| 深夜早朝割増 | 22時〜翌5時 2割増 | メーター運賃に一律加算 |
| 障害者割引 | 手帳提示で1割引 | 事業者により適用条件が異なる場合あり |
B地区福岡B地区(久留米市・宗像市・飯塚市・行橋市など県内39市町村)
上記2地区以外の福岡県内39市町村です。2024年10月1日に運賃改定が実施されました。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 初乗り運賃 | 1.5kmまで 780円 | 2024年10月改定(旧:1.5km・700円) |
| 加算運賃 | 255mごとに 80円 | 2024年10月改定(旧:286mごと・80円) |
| 深夜早朝割増 | 22時〜翌5時 2割増 | 全国共通 |
| 障害者割引 | 手帳提示で1割引 | 詳細は各事業者に確認 |
福岡A地区は初乗り距離が1.6kmと長いため、1〜2km程度の近距離では割高に感じる場合があります。一方、北九州地区は短縮運賃制度により1.04km/610円と近距離に優しい設定になっています。中距離(5km前後)以上では各地区の差は小さくなります。介護タクシーの場合は、これに加えて介助料・機材使用料が加算されますので、必ず事前に見積もりを取ることをおすすめします。
介護タクシーの追加料金と料金計算例
介護タクシーの総額は、タクシーメーター運賃に以下の追加料金が加算されます。事業者によって設定が異なりますので、予約時に確認してください。
主な追加料金の目安
| 項目 | 料金目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 迎車料・予約料 | 300〜500円程度 | 事業者により無料の場合もあり |
| 基本介助料(自費) | 1,000〜2,200円程度 | 介護保険適用時は1割〜3割負担 |
| 車椅子使用料 | 300〜2,000円程度 | リクライニング車椅子は高め |
| ストレッチャー使用料 | 3,000〜5,000円程度 | 特殊介助料含む場合あり |
| 付添い介助(ヘルパー) | 1時間 4,000円程度 | 以降15分ごとに加算 |
| 深夜早朝割増 | メーター運賃の2割増 | 22時〜翌5時・全国共通 |
料金計算例(北九州市の例)
ケース1:車椅子で病院まで片道4km(自費・北九州地区)
- メーター運賃:610円(初乗り)+ 80円×11回(残り3,080m ÷ 280m ≒ 11回)= 1,490円
- 迎車料:300円
- 車椅子使用料:300円
- 基本介助料:1,200円(自費)
- 合計目安:約3,290円
ケース2:車椅子で病院まで片道4km(介護保険適用・北九州地区)
- メーター運賃:1,490円(上記同様)
- 迎車料:300円
- 車椅子使用料:300円
- 基本介助料:介護保険1割負担で約110〜220円
- 合計目安:約2,200〜2,310円
ケース3:ストレッチャーで転院・片道10km(自費・福岡A地区)
- メーター運賃:830円(初乗り)+ 80円×31回(残り8,400m ÷ 268m ≒ 31回)= 3,310円
- 迎車料:500円
- ストレッチャー使用料:4,000円
- 基本介助料:2,200円(自費)
- 合計目安:約10,010円
午後10時から翌朝午前5時の間はタクシーメーター運賃が2割増しになります。上記ケース1の北九州地区の例では、深夜の場合メーター運賃が約1,788円になります。また介助料も夜間・深夜に加算する事業者が多いため、夜間利用の際は必ず事前に確認してください。
福岡市の助成制度(2025年度最新情報)
福岡市では、障害のある方・高齢者の移動を支援するため、複数の助成制度を設けています。各制度は重複して利用できませんので、ご自身の状況に合った制度を選択することが重要です。
① 福祉タクシー利用券(令和7年度)
介護タクシー(ワゴン型・電動車いすのまま乗車可能な車両)の利用を想定した専用の助成制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 福岡市内に居住し、対象者及び配偶者がともに市民税非課税の方で、身体障害者手帳の一定の等級・療育手帳A・精神障害者保健福祉手帳1級・難病患者等に該当する在宅の方(18歳未満は世帯全員が非課税) |
| 利用券の内容 | 九州運輸局が認可した30分までの時間制運賃相当額の利用券 |
| 交付枚数 | 年間最大48枚(申請月により異なる) |
| 利用上限 | 1回の乗車につき1枚まで |
| 電動車いす使用者 | ワゴン型タクシー(電動車いすのまま乗車可能)用の利用券が交付される |
| 有効期間 | 令和7年4月1日〜令和8年3月31日 |
| 申請窓口 | 各区の福祉・介護保険課(精神障害者保健福祉手帳1級の方は健康課) |
福祉タクシー利用券の交付を受けた方は、同じ年度内に「福祉乗車券(タクシー助成券)」「高齢者乗車券」「障がい者移送サービスのタクシー助成券」を選択することができません。申請時に一つの制度を選ぶことになります。どちらが自分に有利か、利用頻度・移動距離をもとに比較検討してください。
② 福祉乗車券(タクシー助成券)(令和7年度)
一般のタクシー(介護タクシー含む)を利用する際に使えるタクシー助成券です。福祉タクシー利用券を選んだ方は利用できません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 福岡市に住民登録があり、前年の合計所得金額が200万円未満で、身体障害者手帳1〜3級・療育手帳A・精神障害者保健福祉手帳1級・被爆者健康手帳・戦傷病者手帳のいずれかをお持ちの方(8種類の券種から1種を年1回選択) |
| 助成額 | 500円/枚 |
| 1回の利用上限 | 最大2枚(運賃1,000円以上の場合。500〜999円は1枚まで、500円未満は利用不可) |
| 申請方法 | オンライン申請(7月1日以降)または郵送。昨年交付を受けた方には申請書が自動送付 |
③ 高齢者乗車券(令和7年度)
70歳以上の高齢者向けの乗車券制度です。上記の手帳を持たない70歳以上の方が対象です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 福岡市に居住・住民登録のある満70歳以上で、令和7年度福岡市介護保険料所得段階区分が1〜7の方(身体障害者手帳1〜3級・療育手帳A・精神障害者保健福祉手帳1級等を持つ方は福祉乗車券の対象のため除外) |
| 助成の内容 | タクシー助成券(500円/枚、1回最大2枚)・交通用福祉ICカード・その他の交通券など8種類から1種を選択 |
| 申請期間 | 令和7年7月15日〜令和8年9月30日 |
北九州市の助成制度(重度障害者タクシー利用券)
北九州市では、重度の障害をお持ちの方を対象に、タクシー初乗り運賃相当額を助成する「重度障害者タクシー利用券」を交付しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 市民税非課税世帯で北九州市内に住所を有する在宅の方のうち、①視覚・下肢・体幹・移動機能・内部障害で身体障害者手帳1・2級(複数障害の合併による1・2級は除く)②療育手帳A ③精神障害者保健福祉手帳1級 のいずれかに該当する方 |
| 助成内容 | 初乗り運賃相当額の利用券(月4枚・年48枚) |
| 電動車いす使用者 | 電動車いす用タクシー初乗り運賃相当額の利用券を交付 |
| 申請窓口 | 各区役所の高齢者・障害者相談コーナー |
北九州市周辺の自治体でも独自の福祉タクシー利用券を交付しています。例えば筑紫野市では1枚500円・年間66枚(1回最大2枚)の利用券が交付されています。苅田町などでは透析患者向けに96枚の手厚い支給を行っている例もあります。お住まいの市区町村の福祉窓口に必ずお問い合わせください。
福岡市・北九州市の地域別介護タクシー環境
福岡市(博多区・天神エリア・西区・早良区等)
- 事業者数:九州最多水準。大手(西鉄タクシー系列を含む)から個人事業者まで幅広く選択肢がある
- 交通事情:天神・博多駅周辺は慢性的な渋滞。時間加算に注意が必要
- 24時間対応:多数の事業者が24時間対応
- 早めの予約:人気の事業者や週末・祝日は1週間前からの予約が推奨
- 福祉インフラ:市内主要病院へのアクセスが良好。西鉄系の大手福祉タクシーも充実
北九州市(小倉北区・八幡西区・門司区等)
- 事業者数:福岡市より少ないが、政令市として事業者は充実
- 地域差:小倉北区・八幡西区は事業者が多い。門司区・若松区など周辺部は少なめ
- 北九州市外への移動:関門海峡を越えた山口県・下関市への移動需要がある。県境をまたぐ場合は事前確認が必要
- 工業地帯:中心部から響灘工業地帯などへの遠距離移動は費用が高くなる
福岡B地区(久留米市・飯塚市・直方市・行橋市等)
- 久留米市:B地区最大の都市。介護タクシー事業者は一定数存在する
- 飯塚市・直方市・田川市(筑豊地区):かつての炭鉱地帯で高齢化が進む。事業者数は多くないため早めの予約を
- 行橋市・豊前市:大分県境に近い地域。事業者が限られる場合がある
- 嘉麻市・嘉穂郡:山間部で過疎化が進行。事業者の稼働状況は事前に必ず確認
離島(糸島市・宗像市の離島など)
福岡県は壱岐・対馬が長崎県に属しますが、糸島市の小呂島、宗像市の大島・地島などに離島があります。これらの離島では介護タクシー事業者は限られており、専門事業者がほとんどいない可能性があります。離島在住の方が本土の病院へ通院する際は、船(フェリー)との組み合わせになるため、福岡市内の事業者との事前調整が不可欠です。
よくある質問
Q. 福岡県の介護タクシーの料金相場はいくらですか?
介護タクシーの料金は通常のタクシーメーター運賃に介助料などが加算される仕組みです。メーター運賃は地区によって異なり、福岡A地区(福岡市等)は初乗り1.6km・830円、北九州地区は短縮制で1.04km・610円から、福岡B地区(久留米市等)は初乗り1.5km・780円です。これに介助料(1,000〜2,200円程度)・車椅子使用料(300〜2,000円程度)が加算されます。
Q. 福岡市で福祉タクシー利用券は使えますか?
はい、使えます。福岡市では市民税非課税世帯の在宅障害者等を対象に、年間最大48枚の福祉タクシー利用券を交付しています。電動車いす使用者にはワゴン型タクシー専用券が交付されます。ただし、福祉乗車券(一般タクシー用タクシー助成券)と同時に受給することはできません。
Q. 福岡市と北九州市で介護タクシーの料金は違いますか?
はい、基本のタクシーメーター運賃が異なります。福岡市は初乗り1.6km・830円(2023年8月改定)、北九州市は短縮運賃制度で1.04km・610円から(2022年9月改定)です。近距離では北九州市の方が安くなる傾向があります。
Q. 北九州市で重度障害者タクシー利用券はもらえますか?
はい、北九州市では市民税非課税世帯の在宅の方で、身体障害者手帳1・2級(視覚・下肢等)・療育手帳A・精神障害者保健福祉手帳1級に該当する方に、重度障害者タクシー利用券(月4枚・年48枚)を交付しています。各区役所の高齢者・障害者相談コーナーで申請できます。
Q. 福岡県の介護タクシーで深夜・早朝に利用すると割増になりますか?
はい、午後10時から翌朝午前5時の間はタクシーメーター運賃が2割増しになります(全国共通)。また身体障害者手帳・療育手帳などを提示することで、一定金額を超えた部分が1割引になる「公共的割引」制度もあります。
福岡県で介護タクシーを利用する際の注意点
1. 地区によって運賃が異なることを確認する
福岡県は3地区に分かれており、初乗り運賃・加算距離が異なります。福岡市(A地区)は1.6km/830円、北九州市は短縮制で1.04km/610円から、久留米市など(B地区)は1.5km/780円です。事業者に予約する際は必ず地区を確認し、事前見積もりを取るようにしましょう。
2. 渋滞が多い福岡市中心部は時間に余裕を持って
福岡市の天神・博多周辺は慢性的な渋滞が発生します。時速10km以下になると時間距離併用運賃が加算されるため、総額が予想より高くなる場合があります。通院の際は最低30分の余裕を持って出発してください。
3. 助成制度の重複利用不可に注意(福岡市)
福岡市では「福祉タクシー利用券」「福祉乗車券タクシー助成券」「高齢者乗車券」は同時に受給できません。介護タクシー(ワゴン型)を主に使う方は福祉タクシー利用券が有利ですが、一般のタクシーもよく使う方はタクシー助成券の方が使いやすい場合があります。ご自身の利用状況を踏まえて申請制度を選択してください。
4. 筑豊地区・田川地区などは事業者が少ない
飯塚市・直方市・田川市などの筑豊地区は、かつての炭鉱地帯として高齢化が進んでいますが、介護タクシー事業者の数は福岡市・北九州市と比較すると少なくなっています。急な利用には対応できない場合もあるため、早めの予約と複数事業者の把握をおすすめします。
5. 関門海峡をまたぐ移動は事前に確認を
北九州市から山口県下関市への移動や、その逆の場合、県境をまたぐ長距離輸送になります。事業者によっては対応地域外となる場合があるため、予約時に目的地・出発地を明確に伝えて対応可否を確認してください。
6. 西鉄タクシー系列の存在を活用する
福岡市では西日本鉄道グループ(西鉄タクシー)が大きなシェアを持ちます。大手系列のため安定したサービスが期待できますが、個人事業の介護タクシーと比較してきめ細かな対応が異なる場合があります。急な変更や特殊な介助が必要な場合は、事前に詳しく相談しておくことをおすすめします。
7. 透析患者は通院頻度を考慮して助成制度を選ぶ
週3回の人工透析を受ける方は月12〜13回程度のタクシー利用が必要となります。福岡市の福祉タクシー利用券(年48枚)や北九州市の利用券(年48枚)を利用すると大幅に費用を節減できます。なお北九州市周辺の一部自治体(苅田町など)では透析患者向けに年間96枚と特に手厚い支給を行っている事例もありますので、周辺市区町村在住の方はお住まいの自治体にご確認ください。
福岡県の主要都市・地域情報
福岡県内の各主要都市については、より詳しい情報を各市区町村ページでご確認ください。
その他の市区町村についても、介護タクシー事業者が対応しています。お住まいの地域の事業者については、各市区町村の福祉担当課またはケアマネジャーにご相談ください。